ぼくが拾ったのは、ずぶ濡れの男のひとでした。
この幸せは 本物じゃないと わかってる
天涯孤独な少年・夏芽が川で助けたのは、記憶を失った紳士だった。
戸惑う彼を泉水と名付け、一緒に暮らし始める夏芽。
徐々に泉水は心を開き、いつしか二人は愛し合うように。貧しいながらも幸福な日々。だが、それは儚い幻だった。
泉水が記憶を取り戻した時、幸せは音を立てて崩れた。
豪奢な館で再会した泉水は、夏芽が知っている泉水ではなくなっていた。
消えてしまった恋人の面影を追う夏芽は、向けられる冷酷な視線の中に、彼の苛立ちを感じて――。